藤咲さんは男の人だけど、何かが違った。あおいの周りにいた男子とは、別の何かがあった。
だって、あたしがこんなに男の人とのびのび話が出来るなんて。
執事だから?
大人っぽいから?
あたしにはまだ、分からない。
フランスに来て、いろんな事があって…
藤咲さんと話をして…
こんな風にいろんな事を考えさせられたのは、綾からの電話だった。
〔そっかーじゃあ、あおいはそれなりに過ごしてんだ?〕
「…うん。まだ馴れないけど、こっちの人達、案外いい人だったから」
自室の窓の外を見据えながらあおいは言った。
〔いいなぁ、あおいん家、いつかお邪魔させてよ〕
「あはは、是非来てよ。交通費半端ないけど」
〔はは!あおいも、帰ってきてね〕
「うん!また学校行って綾とばかしゃべりしたい」
〔待ってるよー!あと…池野の件、あおい考えてる?〕
「…あっ忘れようとしてたのに」
胃がキリリと締め付けられた。
〔池野、あおいの事気にしてる〕
「え?!」
〔あおいが意味不に逃げたからだよ。そのまま突然フランス行っちゃうしさ〕
「う…」
〔あたしも冗談じゃないかって思ったよ。だからあおい…〕
綾…
「うん。あたし…いつか絶対帰るよ。綾や池野くんに会いに行くから」

