難しい藤咲の授業。
そして休憩時間、日本での生活のことを藤咲に話してる自分がいた。
藤咲は静かにあたしの話を聞いてくれた。
いろんなことを話した気がしたけど、池野くんのことは言えなかった。
藤咲の前だと、なぜか恥ずかしかった。
でも話し終えると、胸のつっかえが少し楽になったかもしれなかった。
「では、日本での生活は楽しかったのですか?」
「うーん…」
あおいは眉をひそめた。
楽しかった…?
池野くんがいれば毎日楽しかったかも。
でも今はあたし…池野くんから逃げた。そのままこっち来ちゃったから、池野くんと変な空気のまま…。
「あんまりかも…」
あおいはおやつのシフォンケーキを頬張りながら答えた。
「そうですか」
藤咲は優しく微笑んだ。
「…」
藤咲が微笑むたび、ドキリとしてしまうのはなぜだろう?
「あおい様にはボーイフレンドはいらっしゃったのですか?」
「え?!」
不意に、ボッと顔が熱くなる。
「いらっしゃったのですね?」
あたしの様子を見て、藤咲はささやく。
「い、いやそんな!あたしなんか…男子に相手されませんでしたもん」
藤咲は微笑むばかりだ。
なにこれ。すごい恥ずかしい。そもそも執事にあたしの彼氏がどうやらなんて関係ないじゃない。

