「あおい、まだ不機嫌?」
晩御飯、豪華な料理に手をつけず見つめているあおいに、お母さんは心配そうに言った。
「執事…王子様みたいだった」
「うん、若いながら優秀な執事さんらしいわよ」
「お母さん、執事ってあたし達の世話係だよね?」
「そうだわね」
料理を頬張りながらお母さんは言う。
「お母さん、あたしあの執事やだ」
「え?」
あおいは立ち上がった。
「ごちそうさま」
「あおい?」
あおいはダイニングを抜け出した。
だって…だってあの人の前であたし…あんなこと聞かれちゃったし!
それにあたし、男の人は苦手…。池野くんだってあんなにあがっちゃったし。もともとお父さん以外の男の人とまともに話したことがない。

