「…お気持ちは嬉しいです。でもあたしには執事さんがいますから大丈夫です」
松永さんの顔が少し歪んだ。
「ああ…この前の男か」
え?
どうしてそういう言い方するの?
二人は知り合いみたいなのに。
「あいつなんて、信じては駄目だ」
「どうして」
「こっちの台詞だ」
口調が変わる。
「あんな仮面を被ったままのあいつをなんでお前は信じられるんだ?」
………仮面?
「藤咲さんをそんな風に言わないで!」
あおいは声を上げた。
「俺の事をあんな風に言ったのは誰だ?」
「えっ…」
最初、意味が分からなかった。
しかし気付いた途端、松永さんへの警戒心がざあっと上がった。優しく抱きしめられたことが、心の隅に沈んでゆく。
聞いてたんだ。
藤咲さんの寮で話してたこと、聞いてたんだ。
「あおいちゃん、俺の方へ来ないか。そうしたらお前が大好きな藤咲のことを教えてあげる」
ドキリと心臓が跳びはねた。

