「驚いた?」



松永さんは二人の顔が見えるよう、ライトを上に向けながらにこりとした。



やっぱり、松永さんが犯人だったの…?



「そんな顔しないでくれよ。怖い思いさせて悪かった…謝る。でも、犯人は俺じゃないから」



「じゃあ、ど…どうしてこんなこと?」



あたしは一歩、二歩と松永さんから離れた。


「あおいお嬢様を守ろうと思って」


冷や汗が伝った。



かつて仕えていたお嬢様に追放された、松永さん。


それを恨む松永さん。



「あたし、知ってるんだから」


ぴしゃりと、言いたかった。

刑事が犯人を捕らえたみたいに、強く、堂々と言いたかった。


なのに

口から出たのは、驚くほど頼りなく、か細い声で震えていたんだ。


「怖がらないで。俺は…」



「来ないで」



歩み寄った松永さんに、あたしはまた一歩引いた。


「俺が、あおいお嬢様を誘拐すると思うのか」



松永さんは、ため息をつき肩を下げてから、また穏やかな表情であおいを見た。


怖がらないで。


俺は君の味方さ。


誘拐なんてしようと思ってない。


「君を守りたいんだ」


口調が真剣だったから、あおいは瞬きした。


「…え?」