「とにかく、“綾月”でお願いします。仕事中はそう呼んでたんですから、同じように呼んで下さい。」
「俺、仕事とプライベートは切り替える人間だから。名字変わったから呼びにくいんだよな…。名前の方が呼びやすいじゃん。」
ニッコリと笑われてしまい、もはや返す言葉を喋る気にもなれない。
仕事中は“綾月”って呼んでるんだから、プライベートだろうが何だろうが呼べるでしょ?
本当に、この人の言ってることには、疑問に思うところがあるなぁ…。
「そうだ、幸歩。これ…忘れ物。」
怪訝な顔で宇堂さんを見ていると、パッと目の前に持っていたものを差し出された。


