「(……何あいつ。)」 周りから言葉なんて聞きもせず、望は音を立てて席を立った。 向かう先は。 佐橋 悠。 「…お前さ。」 いきなり声を掛けたのにも関わらず悠はゆっくりと視線を上げて望を見据えた。 もちろんその様子をクラス全員が見ているわけであり。 時が、一瞬止まった。 「(シカトかよ。)」 心でケッと悪態をつき、もう一度話し掛ける。 「お前、避けられてんの?」 そのとき初めて合わせた目は、とても冷たいものだった。