「…」 教室のど真ん中。 縦・横・斜めと八方を人に囲まれていながら、そのどれとも相容れない、どこか圧倒的な雰囲気をまとって、“そいつ”はいた。 「…」 そいつ―…悠は、望の視線に気づくと、つっ、と眼をすがめ、それから視線を窓の方へと逸らした。 「じゃ…じゃあなーっ…吉沢の席はー…」 担任がやたら焦ったような口調で再び話し始める。 望は、そんな担任には目もくれず… ただ、ほんの少しだけ口元に笑みを浮かべた。