アリス逃走中





「ようこそ不思議の国へアリス。」

目を開けると赤いドレスを着た男が椅子に座って見ていた。

「アリス?…人違いですよ。てか、あんた誰?……男だよな…」

「私はこの国の女王。…それより人違いではないぞ。お前がアリスだ。」


「は?」


「…だからお前はアリスだ。」


「アリス?…あんた頭大丈夫か。俺は、俺の名前は──あれ?俺の名前は??」



女王はやれやれと言うように立ち上がって近づいて来た。


「…お前の名前はアリスではない。でも今からアリスだ。」


「意味わかんねえよ」とぼそっと言ったが、女王には聞こえていた。


「アリス、今からゲームをしよう。お前が勝ったら名前を返してやろう。」


「…ちょっと待て!名前お前が取ったのか?返せよ!」

女王が溜め息をついた。

「アリスまさか覚えてないわけないよな?……アリス、お前は死んだんだ。…そしてゲームに勝ったら生き返らせてやると言っているのだ。分かったか?」


「死んだ……?」

脳裏にあの時の映像が蘇る。

──そう、俺はあの時死んだんだ。小学生を助けるために…