「そおなんヵ・・・」
慎耶の声が沈む。
「ど-せすぐ帰るよ」
あたしは笑って言った。
「梨李」
龍哉があたしの名前を呼ぶ。
「お前はよく頑張ったな」
そう言って大きな手であたしの頭を撫でる。
「なにッ!?」
あたしはびっくりする。
「本当は寂しいんだよな?親が居なくて。お兄ちゃんも1人欠けちゃって。本当は傍に居てほしいんだよな?一緒に暮らしてたいんだよな?」
妙にその言葉が胸に染みた。

別に寂しくなんかない。
結城兄ちゃんが居なくても平気。
いつかそう言って見栄を張った記憶がある。
『梨李、大丈夫か? 俺今日部活で遅いから・・』
唯兄が中学校に入って部活にも入った。
あたしは小学校最後の1年が来た。
『平気だよッ!あたし来年中学生だよ?泣かないよ!』
『分かった・・。寂しかったら遠慮なく電話してこいよ!結城は頼りねぇからな』
『ぅん♪ 行ってらっしゃい★』
笑顔で唯兄を見送った。
  ガチャン
ドアの閉まる音。
静かな部屋。
誰も居ない。あたし1人。