どこか緊張感のない朝霧を急かし、俺達は再び階段を駆け下り始める。

「なぁ朝霧」

階段を走りながら、俺は彼女に問いかける。

「お前の親父さん、このタワーの管理者だろ?ならお前、この異変が何なのかわからないか?」

「私はパパほど詳しくはないですけど…」

そう前置きして、朝霧はおずおずと話し始める。

「このタワーは、コンピュータシステムで何もかも完璧に管理されている筈なんです。万が一の火事や地震の時でも、自動的に電子音声で避難誘導をしたり、スプリンクラーが作動して消火したり…」

しかし俺達の見る限りでは、そういった動きは一切見られなかった。

「ですから、システムそのものが何か異常を起こしたとしか考えられないと思うんです…ごめんなさい、私もこういうのあんまり詳しくなくて…」