しかし。

俺は階段の下から55階の方を見上げる。

爆発だけじゃない。

ガスに引火したせいで、55階には火の手が上がっている。

しかも中途半端な炎じゃない。

たとえこの場に消火器があったとしても、素人の消火活動で鎮火できるレベルじゃない。

それほどの火災に発展しつつある。

「恭一…っ」

不安げに、ハルカが俺の服の袖をつかむ。

「逃げるぞハルカ」

俺は巻き起こる黒煙を吸い込まないように口を塞いだ。

「ここにいたら煙に巻かれる。できるだけ煙を吸い込まないように、下に逃げるんだ」