プールのフロアを出る。

既にこの階は閑散としていた。

ハルカを助けている間に、他の客達は皆、下の階へと避難したらしい。

「全く…薄情な奴ばっかりね。私が溺れてたっていうのに、誰も助けに来ずに逃げるなんて」

両手を腰に当て、憤懣やるかたないといった様子のハルカ。

「まぁそんなもんさ。非常時に他人の事なんてなかなか気にするもんじゃない」

歩きながら、俺は言う。

「へー。まるで救出に来た自分はヒーローみたいな言い草ね。遠回しの自慢?」

ペタペタと足音を鳴らし、ハルカが憎まれ口を叩く。

ん?ペタペタ?

ふと、俺は立ち止まってハルカの姿を見た。