しかし、犠牲者は子供だけではなかった。

「あがっ…助けっ…ぶはっ!がはっ!」

もう一人、プールの中で喘いでいる少女がいるのを、俺は見逃さなかった。

肩辺りまでの茶髪、頭には黄色いカチューシャをつけた、ピンクのビキニの少女。

完全に流水に体を持っていかれてしまっている。

もがくように天に手を伸ばすものの、まるで水底に何かが潜み、彼女の足を引っ張っているのではないかと思うほど、どんどん体が沈んでいく。

「っ…」

歯噛みし、周囲を見回す。

溺れている彼女に気づく者は誰もいない。

皆、火災報知器の音に気をとられ、我先にと逃げる事しか考えていないようだった。