「ゆっくりよ…ゆっくり…」

小声で言いながらハルカが後ずさりする。

その横では朝霧も後ずさり。

恐怖でまともに噛み合わせる事の出来ない彼女の奥歯が、カチカチと音を立てているのが聞こえる。

完全に虎の威圧感に呑まれている。

だから。

「あ…っ!」

ちょっとした床の継ぎ目にも気づけず、朝霧は躓いて転倒してしまう!

そしてそれが、虎の捕食行動の引き金を引いた!

巨体でありながら、しなやかなバネのように。

筋肉の塊を躍動させ、虎は遂に俺達に襲い掛かってくる!