まずい…これじゃあまともに逃げるなんて不可能だ…。

それでも歯を食いしばって立ち上がろうとしていると。

「手を貸す」

八戸が俺の腕を掴んだ。

「慌てないで…ゆっくり立ち上がって。急激な動きは体に障るし、虎を刺激する」

「…すまない」

肩を貸してくれる八戸に感謝しつつも、俺は虎から視線を外す事はなかった。

…今も尚、獰猛な視線で俺達を睨めつける虎。

グルルルル…。

喉を鳴らす音がここまで聞こえる。

圧倒的なまでの威圧感。

今、奴は品定めしている。

どいつから食い殺してやろうかと…。