「あっちにエスカレーターがありますよ」

朝霧が指差す。

フロア中央に設置されているエスカレーター。

といってもシステム異常により、今は停止して、ただの階段に過ぎないのだが。

「フロア内を通りませんか?二宮さんの為の薬や、脱出に役立つものを探しながら移動できますし」

45階以降、システム異常による危険に巻き込まれる事はなくなっていた。

脱出は困難とはいえ、体力さえあれば安全に移動できる。

ハルカの体調も心配だったが、いざとなれば俺が背負って降りればいい事だ。

そんな事もあって、俺達も若干油断していたのかもしれない。

「そうだな…下に降りられるならどこを通っても同じだ」

判断力が鈍り始めていたのか。

俺は朝霧の提案に乗った。