僕は君のもの




風向きのせいかタバコの煙が美紀の方に漂ってくる。



あ…。なんかコレいい香り。




「美紀ちゃん、好きなんだろ?」



「え?」



「直哉のこと。」




バッと中村先輩の方を見た。


彼はただ、正面を向いたままタバコを吸い続けている。




コクンと小さく頷いた。



まだ誰も知らない美紀の恋心。



素直に認めてしまったのは、普段はふざけてばかりのこの人の横顔があまりにも真剣だったからかもしれない。



ベンチを見つめる美紀の頭にふわりと何かが乗った。



顔を上げるまでもなくそれが中村先輩の手だってことはわかる。




どうして?



どうしてこんなくだらないことをする美紀のそばにいてくれるの?



その無償の優しさに甘えたくなる。




溢れ出た涙の意味は美紀にもわからなかった。