目、絶対合ったのにな。
なんで声かけてくれなかったんだろ。
森先輩のことを聞かれたら困るくせに、身勝手なことを考える。
「だから美紀ちゃんと内野先輩って仲いいんだ。」
「うん。」
もっと早く歩いてくれないかなぁ。
美紀、早く家に帰りたい。
「だけど先輩が卒業してくれて助かったよ。やっと美紀ちゃんに近づける。」
森先輩が困ったように言う。美紀は首を傾げるしかなかった。
「内野先輩、超こえーし。近づきたくないんだよな。あの人。」
「直ちゃんは優しいよ?」
「あれ?あの噂知らない?」
「噂?」
「内野先輩が1年の時の話。3年とのケンカで勝ったらしいよ。しかもふっかけてきた相手、血まみれのまま髪掴まれて引きずりまわされてたって…。」
はぁ?何ソレ?
美紀の中の直ちゃんとはかなりかけ離れた感じなんですけど。
でも、そうだよね。美紀は直ちゃんのこと何も知らないんだ。
美紀はただ、ほんの少し…そばにいられただけ。
それ以来、直ちゃんの姿を見ることはなかった。


