「もういい。とにかく広間に行くぞ。そろそろ時間だ」


シャツのポケットから懐中時計を取り出し時間を確認するバシラスにクラウンは慌てて窓の外を見る。そして王宮に着いた時よりも太陽の位置が西にあることに驚いた。どうやらかなりの時間迷子になっていたみたいだ。

先に歩きだしたバシラスを見て、クラウンは申し訳ない気持ちになった。あるべき物のない右袖が彼が歩くのに合わせてゆらゆらと揺れる。片腕がないのでバランスが取りづらいのか歩き方がちょっとおかしい。


「クラウン! どうした」

立ち止まり、振り返って名前を呼んだバシラスに、クラウンは急いで彼の隣に並んだ。


「クロ、ごめん。…ありがとう」