王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐




生臭い臭いのたち込める空間にその身が投げ出された。
眼下には黄緑色をした胃酸の海が広がっている。

(あ~…駄目かも…)

そう思った瞬間――。
握り締めたロープにガクンっという衝撃が走り、落下が止まる。
なんとか鉤爪が引っかかって停止したようだ。

「…っぶねぇ~…」

心臓がドクドクと早鐘を打っている。
ドルメックは震えて滑りそうになる手でロープを握りなおした。

一つ息を付き、改めて周りの状況を確認する。

ここはドルメックの予想通り、ドラゴンの胃の中で間違いなさそうである。

滑り落ちて来た先を振り仰ぐとぽっかりと黒い穴が開いているのが見えた。
あそこから戻っていくのは当然ながら無理そうだった。

シュウシュウ…ボコボコッという音を立てて黄緑色の液体がドルメックを待ち構えている。
胃壁からもポツポツと滴り落ちてくるのが見える。
パンパスの防風陣が無ければ、酸の蒸気ですでに溶け始めていたかも知れない。

「さて…」
ここで一発ボカンとでかいのをお見舞いしてやろうという腹積もりである。
もしかすると衝撃に自身が耐え切れず命を落としてしまうかもしれない。

(死ぬ気も無いが…いざとなれば、ベリルの旦那がなんとかしてくれるだろ)

ドルメックは魔石の力を解放する為に意識を集中させようとした。
その時、視界の端にこの空間に似つかわしくない異物を捕らえた。