王国ファンタジア【宝玉の民】‐ドラゴン討伐編‐




[フハハハハハハッ!
我ニ歯向カウ愚カ者ニハ、相応シイ末路ダ!]


ドラゴンは、まだドルメックが炎に包まれていると思っているらしい。

耳障りな笑い声が響き渡る。


ドルメックは余りに衝撃的な出来事に、身動き一つ取れなくなっていた。


(――っ俺の身代わりに、セシエルが……)


紅く燃え盛る炎を前に、茫然自失で見据えることしか出来ない。

大気すら焦がす様な熱気が辺りを包んでも、ドルメックの身体は芯から冷えきっていた。



震える身体を掻き抱き、見詰める炎の中に、蒼い光がちらついた。


「…っ?!…」


蒼い光を纏って出てきたのは、焼き付くされた筈のセシエルその人だった。


右手を見詰めながら、先程のことなど何事もなかったかの様に呟いた。


「ああ、石が砕けちゃってる。
身代わりアイテムってこういうことなんだね」


強張る身体を叱咤して、ドルメックはセシエルの胸ぐらを掴んだ。

ビックリした顔でドルメックを見るセシエル。


未だ血の気の戻らない顔で睨み付け、掠れた声で告げる。


「っテメェ、二度とこんな真似するんじゃねぇぞ!
今回はたまたまマジックアイテムがあったから良かったが、テメェには待ってる家族がいるんだろうがっ!」


天涯孤独の自分を庇って、彼の帰りを待つ家族を悲しませるなど、ドルメックにとってあってはならないことだった。

残される者の悲しみは、ドルメックにとってどんな拷問よりも耐え難い責め苦。

それが自分の所為で他の誰かにもたらされるのかと思い、絶望感に染まった。



そこに思い至ったセシエルは、少し悲しげな笑みを浮かべた。


「…うん、ごめんね。
でも、同じ状況になったら俺はまた同じ事をするよ。

だって、君は俺達の仲間だからね?」


「――っ!―」


その言葉に、ドルメックは目を見開いた。