次の日の早朝、ドルメック達――東北地区担当メンバーは王都から少し離れた丘の上に来ていた。

辺りはまだ薄暗く、皆の吐く息は白い尾を引き流れる。


「…うぅ〜、寒いっ!寒過ぎやっ!
何で朝っぱらからこないな所来なあかんねんっ?」


フードを目深に被ったクラウンが文句を言っている。

勿論、今ここに居るのはベリルの指示によるものである。

手の中にすっぽりと収まる乳白色の角笛を首から外し、説明を始めた。


「この角笛は、里から王都へ向かう旅の途中に友である『智の龍』から貰い受けた物だ」

「あんた、ドラゴンと友達なのか?!」

「!…バジルさんっ!
そうやって話の腰折るのいい加減やめて下さいよ!

……すいません、気にせず続けて下さい…」


話の途中割って入ったバジルの首根っこを引き、申し訳なさそうに頭を下げるグレード。

ドルメックは思わず笑ってしまった。
他の者達も一様に笑いを堪えている様に見える。


「…ゴホン!では、話を続けるが…。

私の考える通りの物であれば、この角笛を吹けば我が友がやって来てくれる筈だ。
ドラゴンの脅威に怯える王都で試す訳にはいくまい?」


そう言って肩を竦めてみせた。


「本人に聞くっていうのは、そういうことだったんだな」


ドルメックが確認の為に発した言葉に、皆が納得した様に頷く。


「人語を話せるし、500年も生きてるだけあって物知りで楽しい人…じゃなくて、ドラゴンだったよ」


セシエルが、『ドラゴン』という言葉に尻込みしている皆を気遣い、笑顔で捕捉した。