ここ首都ローゼンフェルド市にハーヴェイの家を構えることになった時、この建物を建てるとき、街並みになじむようデザイン、建築してもらった。

 そうじゃないと一から建てる意味なんてないと思った。どこかで借りれば済む話だ。

 だが、やはりロマネスクな街並みを見渡せるよう十階建てのロマネスクなビルを建てた。



 ここでは五階以上の建造物の建築には特別な許可が必要だった。

 だが俺はロマネスクな街並みを眺め、見渡したいがために、今まで起こさなかった行動を起こした。

 条件の一つである術士事務所を開いた。それによって許可をもらったんだ。


――ここ首都ローゼンフェルド市では、国防や都市の安全・治安維持にかかわる建物にのみ、高層建築が許されている。監視観測・移動に便利であるからだ。――


 俺はこの街でしばらくは非公認・非公式で仕事をしていた。

 わざわざ国に申請して正式な術士事務所なんてお墨付き貰わなくったって仕事はたくさん舞い込んできたから。

 だが申請さえすれば、許可さえこじつければ、とそれを知ってすぐ術士事務所の開設を申請し、ロマネスクを一望できる住居を建てた。


 俺の外見と語っている歳を聞くとたいていの人は驚く。でもこう見えて、結構いい仕事してきたからお金に余裕はあった。


 おかげで今ここから、気に入ったロマネスクの風景を好きなだけ見渡せ、現に今も寝起きですぐ、そんな古めかしい石造りの建物や人々でごった返す石畳の大通りを前に、安らいでいる、というわけだ。


 そんな数年前に完成したばかりの真新しい十階建てのロマネスク建築の目の前にある大きな樹木がいつものように俺の視界の隅にうつる。


 その木は、角に位置するこの建物のちょうど目の前にあり、どっしりと存在を誇張するかのように地に根を張り、いつものように数羽の小鳥が太い枝で羽を畳み、さえずっていた。


 否、正確に言うと『早く餌をくれ』と言いながらはるか上、十階の窓から顔をだす男の、ぼんやりとした頭に刺激をとばしてる。