ハーヴェイに敬語を使われる日が来ようとは微塵も考えていなかったらしく、戸惑いをみせるロイをからかいながら、その辺の空いている椅子に座る。
「はははっ、やっぱりやりづらいか、そうかそうか。お望みとあらば背筋と言わず、芯まで凍らせてやるぞ。
ま、これからもどうぞよろしくお願いしますね、ロイせーんせいっ」
「はぁ。んで、あの時の、ブブカの後から今まで八年、いや九年か。とにかく、どうしてたんですか! クレネルたい……中佐!」
わざとらしい敬語を使い、部下が上司に怒っているかのように質問を投げかけた。
「懐かしい名前だなー。でも元“大尉”の間違いだ。たーいーい~」
ロイの「早く答えろ」という無言の圧力を無視し、朗らかに約十年前に使っていた名に反応する。
「いーや、中佐だ。ハーヴェイ・クレネル、ちゅ、う、さ!」
強調しながら強気に押してくるロイ。そんなロイに不思議な顔を向けていたハーヴェイが気づいたのか、目が開かれた。
「……あー、なるほど! そうか、昇進したのか、そうだよな。二階級も特進したのか、俺」
「そっかー、死んだことになってるもんな、俺」と、まるで他人事のように話す当人。
「そうだよっ! ……ちなみに俺は元”中尉”だ」
「中尉ってことは、昇進したのか? そーかそーか。アシュレイ中尉か。
……って、“元”?」
一瞬の喜びを瞬時に消して首をかしげる。
「そう言えば」と思いつき、ロイを見る。
「何でお前教師してんだ? 軍、辞めたのか? ……お前の夢だっただろ! 軍人になって、国を護って、ゆくゆくは王族近衛隊の騎士になる、ってさ!?」
怒りを帯びた声を荒げたながらロイをじっと見た。
「ブブカ研究所自爆事件」
ロイが静かに、そっと、ハーヴェイの様子をうかがいながら呟いた。
「九年前の、あの時のブブカ救出作戦――ブブカ遺跡研究所 人質立て篭もり救出作戦、は、……最終的には“ブブカ研究所自爆事件”って名で処理されたんだ」
「はははっ、やっぱりやりづらいか、そうかそうか。お望みとあらば背筋と言わず、芯まで凍らせてやるぞ。
ま、これからもどうぞよろしくお願いしますね、ロイせーんせいっ」
「はぁ。んで、あの時の、ブブカの後から今まで八年、いや九年か。とにかく、どうしてたんですか! クレネルたい……中佐!」
わざとらしい敬語を使い、部下が上司に怒っているかのように質問を投げかけた。
「懐かしい名前だなー。でも元“大尉”の間違いだ。たーいーい~」
ロイの「早く答えろ」という無言の圧力を無視し、朗らかに約十年前に使っていた名に反応する。
「いーや、中佐だ。ハーヴェイ・クレネル、ちゅ、う、さ!」
強調しながら強気に押してくるロイ。そんなロイに不思議な顔を向けていたハーヴェイが気づいたのか、目が開かれた。
「……あー、なるほど! そうか、昇進したのか、そうだよな。二階級も特進したのか、俺」
「そっかー、死んだことになってるもんな、俺」と、まるで他人事のように話す当人。
「そうだよっ! ……ちなみに俺は元”中尉”だ」
「中尉ってことは、昇進したのか? そーかそーか。アシュレイ中尉か。
……って、“元”?」
一瞬の喜びを瞬時に消して首をかしげる。
「そう言えば」と思いつき、ロイを見る。
「何でお前教師してんだ? 軍、辞めたのか? ……お前の夢だっただろ! 軍人になって、国を護って、ゆくゆくは王族近衛隊の騎士になる、ってさ!?」
怒りを帯びた声を荒げたながらロイをじっと見た。
「ブブカ研究所自爆事件」
ロイが静かに、そっと、ハーヴェイの様子をうかがいながら呟いた。
「九年前の、あの時のブブカ救出作戦――ブブカ遺跡研究所 人質立て篭もり救出作戦、は、……最終的には“ブブカ研究所自爆事件”って名で処理されたんだ」
