君と竜が望んだ世界

「ロイの声が懐かしくて……。えーと、声は聞いてたぞ。声だけは。内容はー……今更だしな」

 生徒らしく、すいません、といった態度から、急に開き直り気味に笑った。


「生徒のくせに生意気なっ!」

 腕を組みながら少しだけ下にあるハーヴェイの顔をにやけながら睨んだ。

「元部下、元後輩、元ヘタレのくせに生意気なっ!」

 こちらは腰に両手をあてながらギラリとした眼を細めて睨んだ。

「仮にも生徒の前で教師に向かって『元ヘタレ』は余計だっ!」


「なんかロイ先生とハーヴェイ君って兄弟とゆうか親友とゆうか……、仲いいのね」

 一通り戯れた後、満足したのか、離れて落ち着いた。

「そうだ、午後は実技の授業で、訓練場に集合だからな。ヒマだったら訓練場のすぐ横に俺の教員室あるから、顔出せよ!」

 じゃ、と笑いロイは教室を出て行った。


   ――◇――

 ロイに「顔出せ」と言われたこともあり、少し早めに訓練場に着いたハーヴェイ。


 訓練場の一角にいくつかある戦闘科の教師専用の部屋からロイの部屋を探し、訪ねた。


「ローイせーんせーい、俺ですよー。ハーヴェイ・ゼルギウスでーす。前はハーヴェイ・クレネルでしたよー」

 ノックをしながらドア越しに、楽しそうに声をかける。

「……入るぞー」

 直後、返事を待たずにドアを開けて部屋に入った。

 部屋の隅にある机に向かって座っていたロイは、予想していた来客に手を止めた。

「よぉロイ。暇そうだな。でもちゃんと先生してるんだな、ふぅーん、あのロイが……」


 そんなことを呟くハーヴェイに顔を向けたロイは顔をしかめた。

はぁ。お前に先生なんて呼ばれる日が来ようとはな……。
 その上いくら教師と生徒だからって人前で敬語を使われるなんて、……背筋が凍りそうだ」