君と竜が望んだ世界

 カナトールも遠目にそこに関心を向けていると、何かを配り歩いていた部下が小袋を持って近づいてきた。

 目の前に来ると彼は「全員に一粒ずつ与えろ」と言われた、と話した。 

 そして豆粒ほどの大きさの不思議な気味の悪い褐色の丸薬を手渡すと敬礼し、次の人へと小走りで去って行った。


 カナトールはもらった丸薬を首を傾け、疑いつつも言われたとおり食べた。すると丸薬を収めた胃袋を中心に、じんわりと体の内側が熱くなり、力が湧いてくる。
 その薬の与える万人共通の感覚に驚いていた。

 深い傷から流れ出る血は少しずつだが止まり、小さな傷は術をかけられたように治っていく。

 傷痕は残っているものの、垂れ流しだった血はほぼ確実に止まっていく。

 深い傷も、おそらくゆっくり時間をかけ、ある程度は回復に向かうだろう。

 そしてもう一つ。術式攻撃や最後の防戦で疲弊していたはずの術力がや体力が戻ってきた。


――凄い魔法薬だ――

 疑ってかかったカナトールは実際に体験し、その言葉は意図せず漏れていた。


 体の内外の回復に安堵し、一息ついて周りを見渡すと、不思議な光景にカナトールは何とも言えない感覚に安堵のため息をついた。

 隊の部下たちの武器や防具、服や髪に至るまで壊れ傷つき、ボロボロだった。