自分の強さと、上位クラスの自分の術士としてのランクに、そう思っていた傲慢で自信過剰な自分に今更ながら嫌気を覚えた。
個人戦と団体戦は別物なのだから。
半数ほどにまで減ったとき、魔獣たちは利口な行動を取った。
分が悪いと悟ったのか、一旦その場から退き下がり、遠く後方に戻って、一カ所に集まりだした。
その様子を確認した黒いコートの人物は体をカナトールたち隊員に向け、一直線に近づいてきた。
誰もが何者なのか、正体を顔を確認しようと視線を向けた。注目していた。
もちろんカナトールも。しかし彼は口元より上を覆い、顔半分を仮面で隠していた。
夜会にでも参加しているような、シンプルで無表情で少し怖い白い仮面は、その双眸から見える瞳と口元のみ、他者の視認を許していた。
彼は氷透壁の直前まで来ても速度を緩めず、突き進んできた。
だがこの場の全員が不可通であると判断していた壁を、何の素振りも見せず、あたかも何も存在していないかのように、簡単に通り抜けて入ってきた。空気にしか思っていないように。
本人の術式とはいえ、存在する壁を抜けるのは難しいというのに。
辺り一面がそれに驚いていると、いつの間にか彼は怪我人が集められている場所にいた。
そのまま手早く医療術士の補佐をしていた軍人に小袋を渡し、何かを伝えると、再び歩き出した。
近くの軍人たちにも色々と指示を出すと、彼は重傷者から治癒を施し、他にも連れて来られた怪我人に次々に術をかけていった。
どんどん術式を施していく彼からは、誰もが感じ取れるほどの強大な術力が溢れんばかりに発されていた。
そんな強すぎる術力は普通は使わない。というより持ち合わせてなどいない。しかもその強大な力の使用は、術士の身体へ――最悪の場合、命を落とすかもしれないほど危険な――大きな負担をかけてしまう。
だがそんなそぶりなど全く感じさせず、その無駄のない、鮮やかに紡がれた治癒の術式が発する淡い金色の光は、見る者を魅了していった。
医学教本に記されているかのような繊細かつ、慣れた動き。精巧さ、一流さを表す、きれいな金色の発光。
個人戦と団体戦は別物なのだから。
半数ほどにまで減ったとき、魔獣たちは利口な行動を取った。
分が悪いと悟ったのか、一旦その場から退き下がり、遠く後方に戻って、一カ所に集まりだした。
その様子を確認した黒いコートの人物は体をカナトールたち隊員に向け、一直線に近づいてきた。
誰もが何者なのか、正体を顔を確認しようと視線を向けた。注目していた。
もちろんカナトールも。しかし彼は口元より上を覆い、顔半分を仮面で隠していた。
夜会にでも参加しているような、シンプルで無表情で少し怖い白い仮面は、その双眸から見える瞳と口元のみ、他者の視認を許していた。
彼は氷透壁の直前まで来ても速度を緩めず、突き進んできた。
だがこの場の全員が不可通であると判断していた壁を、何の素振りも見せず、あたかも何も存在していないかのように、簡単に通り抜けて入ってきた。空気にしか思っていないように。
本人の術式とはいえ、存在する壁を抜けるのは難しいというのに。
辺り一面がそれに驚いていると、いつの間にか彼は怪我人が集められている場所にいた。
そのまま手早く医療術士の補佐をしていた軍人に小袋を渡し、何かを伝えると、再び歩き出した。
近くの軍人たちにも色々と指示を出すと、彼は重傷者から治癒を施し、他にも連れて来られた怪我人に次々に術をかけていった。
どんどん術式を施していく彼からは、誰もが感じ取れるほどの強大な術力が溢れんばかりに発されていた。
そんな強すぎる術力は普通は使わない。というより持ち合わせてなどいない。しかもその強大な力の使用は、術士の身体へ――最悪の場合、命を落とすかもしれないほど危険な――大きな負担をかけてしまう。
だがそんなそぶりなど全く感じさせず、その無駄のない、鮮やかに紡がれた治癒の術式が発する淡い金色の光は、見る者を魅了していった。
医学教本に記されているかのような繊細かつ、慣れた動き。精巧さ、一流さを表す、きれいな金色の発光。
