てきぱきと作戦を説明し、各自の役割を指示するサレンスは、日ごろとは別人のようである。
 しかし、やっぱり彼は彼だった。

「よし、こいつが終わればドラゴン退治の英雄だ。女の子にもてもてだぞ」
「おう」

 素直なアウルが真っ先に反応するが、それをサハナが咎める。

「アウルーーー!!」
「わっ、怒るな。って、なんでサレンスさんには怒らないんだ? 言い出したのはあっちだぞ」

 襲い来るサハナの小さなこぶしを柔らかく受け止めながら、アウルは責任をサレンスに転嫁しようと試みるが、彼女には通じない。

「何言ってるの。サレンスさんはアウルに気を使ってるんでしょっ!」
「何で、そうなるー」

 騒ぐ二人をよそに僅かに眉をしかめ、どことなく落ちつかなげに表情を曇らせるサレンスにクラウンが声を掛ける。

「あん子の不在に慣れへんようやな」
「そのようだ。こういうときはまず『こんなときに不謹慎な』とか何とか言われていたんだが。あの子の突込みがないのは確かに物足りないな」

 サレンスの言葉にクラウンがにやりと笑う。

「気合が入らんのやな。なら代わりに言うてやろか。『こんなときに不謹慎です、サレンス様。ちゃんとして下さい』」

 クラウンによるレジィの見事なまでの物まねだったが、サレンスは首を傾げる。

「なんか違うなあ」
「あん子の言う通りや。ほんまに手がかかる」

 肩を落とすクラウンであった。