「アウル君、王水を浴びせたら、君の出番だ」
「おう」
「打撃を与えて、湖に追い立てろ」
「まかせておけ。と言うかそのままドラゴンやっつけちまってもいい?」

 不敵に笑うアウル。彼もまた森の民一の剣の腕を持っている。ドラゴン相手と言えども無駄に臆したりはしない。

「できるものならそれで構わないよ。だが、あまり無茶はするな。ドラゴンの炎は私が何とかするが、あの周りには障気が溜まっていると思っていい。いくら森の民の君でも毒に耐性はないだろう。一撃必殺でいけ。時間を掛けるな。命を落とすぞ」

 サレンスははやるアウルにさらりと釘を刺し、森の民の青年は素直に頷いた。

「わかった」
「サハナはアウルの援護を。弓矢は使えるな?」
「はいっ」

 華奢な少女にしか見えないサハナだが、傭兵を生業とする森の民の娘だ。使えるのは何も腰にいつも下げている短剣だけではない。剣術に優れた民でもあったが、弓矢の扱いの訓練くらいは受けている。しかも的は巨大だ。

「クラウン、ドラゴンが湖上に出れば、湖に雷を落とせ」
「了解や」

 クラウンは素直に頷いたが、森の民二人が目を瞠る。代表したかのようにサハナが尋ねる。

「え、ドラゴンにじゃなくて?」
「そうだ、なかなかおもしろいことが起きるぞ」

 謎めいた笑みを浮かべるサレンス。

「ちょい物騒やけどな」

 クラウンの黄金の瞳に剣呑な光が宿っていた。