鬱蒼とした森を抜けると、開けた場所に到着する。
 偵察隊が駐屯するために木々をいくらが伐採して作った空き地であるが、今は人気は少ない。
 ともにドラゴン討伐に参加したがった彼らであるが、クラウンを迎えに来た使者で元は将軍でもあったバシラスの説得にあって、王都にドラゴンの情報を携えて帰還の途に着いていた。
 バシラス自身も偵察隊に同道したので、今は空き地にいるのは、遅めの朝食の準備をしているサハナとクラウン、それとのん気に草を食む四頭の馬だけだった。

「あっ、アウル、サレンスさん」

 サハナが二人を認めて軽く手を振る。

「どうやったん?」

 近づいてきた二人にクラウンが問う。

「寝てたな」
「ああ、寝てた」

 簡潔すぎる二人の答えにクラウンは黄金の瞳を眇める。

「も少うし、なんか言うことはないんかい?」

 雷電の民の少女のややきつめな言葉に、サレンスは持ち前の柔らかな微笑を返す。

「そう怒るな。現在ドラゴンはうたたね中だ。熟眠にはまだ時間がかかりそうだからな。今のうちに腹ごしらえと作戦会議だ」

 しかし、クラウンは黒に銀の入り混じった頭を何やら不満げに横に振った。

「時間の無駄やろ。作戦はもうあんさんの頭の中にあるんとちゃう?」
「否定はしないが」

 サレンスの凍青の眼差しが二人の森の民に向けられる。

「アウル、君の考えは?」