サレンスが荷物の上に被せられていた毛布を引き剥がすと、四つほどの大きな硝子瓶が現れる。
茶色のガラス瓶の中には液体は八割程度しか入ってはいない。
それを一つずつサレンスが手を触れると、たちまち中の液体が凍りつく。
いまだ朝闇の中、ガラス瓶が白い冷気を立ち上げる。
氷炎の民の力の一端を眼にして、クラウン以外の面々が息を飲む。
「レジィ」
「はい、サレンス様」
いつから起きていたのか、白銀の髪の少年がサレンスの呼びかけに反応して、セツキとともに駆けてくる。
少年の腕には大荷物が抱えられ、セツキの背にはそれ以上の荷物が積まれている。
レジィは何も指示されなくても心得たもので、地面に置かれた荷物は大きな布となる。
サレンスが慎重な手つきで大きな瓶を持ち上げ布の上におくと、それをレジィがきれいに包み込む。
断熱しているのだ。
サレンスの力では凍らすこと自体は簡単だが、気温の高い王都でそれを維持するのは難しい。力を使い続けることになるからだった。
しかし、こうしておけばしばらくは凍ったままで保たれる。
時々、気をつけて温度を下げてやるだけでいいだろう。
「お手伝いします」
ようやくサレンスたちが何をしているか理解したサハナが声を掛け、アウルとクラウンがそれに倣う。
「頼む。気をつけてくれ」
アウルたちが作業を引き継いだのを見てサレンスは、心配げに見守っていたグレードに顔を向けた。
「大丈夫なんですか? 強力な酸ですけど、すぐに金が溶けるわけじゃありませんよ」
「温度を上げれば、反応が加速するだろう? 私も温度を下げるより上げる方がどちらかと言うと得意だしね」
「よくご存知ですね」
「一夜漬けだけどな」
軽い調子の言葉とは裏腹に、彼の凍青の瞳に厳しい色が浮かぶ。
「鱗の方をこれで何とかすれば、後はどうにでもなるだろう。ここにはその力があるものが集められている」
「でも、ドラゴンブレスは?」
「わかっている。しかし、いくらドラゴンでも丸裸の状態ではそうそう吹き出すわけにもいかないだろう。自分の酸やら炎やらでやられるほど馬鹿でもないんじゃないか」
「それは、そうですね」
癒しの民の少年が納得したように一つ頷いた。
茶色のガラス瓶の中には液体は八割程度しか入ってはいない。
それを一つずつサレンスが手を触れると、たちまち中の液体が凍りつく。
いまだ朝闇の中、ガラス瓶が白い冷気を立ち上げる。
氷炎の民の力の一端を眼にして、クラウン以外の面々が息を飲む。
「レジィ」
「はい、サレンス様」
いつから起きていたのか、白銀の髪の少年がサレンスの呼びかけに反応して、セツキとともに駆けてくる。
少年の腕には大荷物が抱えられ、セツキの背にはそれ以上の荷物が積まれている。
レジィは何も指示されなくても心得たもので、地面に置かれた荷物は大きな布となる。
サレンスが慎重な手つきで大きな瓶を持ち上げ布の上におくと、それをレジィがきれいに包み込む。
断熱しているのだ。
サレンスの力では凍らすこと自体は簡単だが、気温の高い王都でそれを維持するのは難しい。力を使い続けることになるからだった。
しかし、こうしておけばしばらくは凍ったままで保たれる。
時々、気をつけて温度を下げてやるだけでいいだろう。
「お手伝いします」
ようやくサレンスたちが何をしているか理解したサハナが声を掛け、アウルとクラウンがそれに倣う。
「頼む。気をつけてくれ」
アウルたちが作業を引き継いだのを見てサレンスは、心配げに見守っていたグレードに顔を向けた。
「大丈夫なんですか? 強力な酸ですけど、すぐに金が溶けるわけじゃありませんよ」
「温度を上げれば、反応が加速するだろう? 私も温度を下げるより上げる方がどちらかと言うと得意だしね」
「よくご存知ですね」
「一夜漬けだけどな」
軽い調子の言葉とは裏腹に、彼の凍青の瞳に厳しい色が浮かぶ。
「鱗の方をこれで何とかすれば、後はどうにでもなるだろう。ここにはその力があるものが集められている」
「でも、ドラゴンブレスは?」
「わかっている。しかし、いくらドラゴンでも丸裸の状態ではそうそう吹き出すわけにもいかないだろう。自分の酸やら炎やらでやられるほど馬鹿でもないんじゃないか」
「それは、そうですね」
癒しの民の少年が納得したように一つ頷いた。

