どこかぎくしゃくとした空気が流れるそこに不意に声がかかる。

「おはよう、上手くやっているかね」

 闇をも払う輝かしい金の髪、翠玉の瞳。
 腰に佩くのは一振りの剣。
 しなやかな、いっそ優雅といって良いほどの身ごなし。
 流浪の民ベリルである。
 サレンスとさほど変わらないほどの年に見えるが、妙に古風な言い回しをする。

「おはようございます、ベリルさん」
「おはようございます」

 森の民のアウルとサハナが逸早く反応する。
 同じ剣を使うものとしてアウルはこの年上の青年に心酔していた。

「ベリルか、おはよう」
「おはようさん」

 続いて残り二人が挨拶を返す。
 ベリルの翠玉の眼差しが彼らを眺め渡す。
 どことなく不安定な隊編成を心配して様子を見に来たのだろう。いくら個々人の能力が高くとも、編成してまもない、急ごしらえの混成部隊である。

 条件はどこも同じだが、その中でも彼らはほとんど実際の戦闘経験を持たない。
 初めて森から出てきた<森の民>、北方の辺境の地で外界とほとんど交流を持たずに過ごしてきた<氷炎の民>、おまけに実在を危ぶまれた伝説の<雷電の民>である。

 戦闘に慣れているとはとても言えないものばかりだ。
 十七の頃から、傭兵として実戦をこなしてきたベリルにとっては、危なっかしく見えて仕方がないのだろう。
 はたして。

「大丈夫なのかね?」

 思い切り憂慮の色を乗せて問いかけられる。

「あまり大丈夫じゃないかもな。なんだか私は彼に嫌われているようだし」

 軽い口調で答えるサレンスの蒼い視線がアウルに流れるが、彼はぷいと横を向いてしまう。
 それにベリルは口の端だけで笑う。

「自業自得だと思うがね」
「意外に君も手厳しいな」
「そうかね」

 サレンスに答えながら、彼のエメラルドとも称えられる瞳がアウルを捉える。