「何でこんな伸ばしとるん?」
「ああ、これか。放っておいたらこうなった」
「放っておいたら、ってこれ随分手入れしとるんとちゃう?」
「レジィがな」
「あんさん、ほんまおもろい人やな」
「そうか」

 会話を交わしながらもクラウンは器用な手つきでみるみるサレンスの髪を編んでいく。

「よっしゃ、出来上がりや」

 一本に編んだ髪の根元に、緻密な象嵌を施した髪飾りを差し込む。金色に輝くそれは中心にサレンスの瞳の色にも似た碧玉がはめこまれていて、銀の髪色によく映える。

「よう似合うとるよ」
「これは?」

 見えないながらも後ろに回した手で金属の感触を確認して、サレンスが問う。

「護符や。とっとき」
「護符?」
「あんさん、どっか危なっかしいんやから」
「そうかな」
「せや。もちろん、タダやない。ドラゴン退治が終わったら高うに払うてもらうんやから覚悟しておき」
「高くつきそうだな」
「命に値段は付けられへんやろ」

 クラウンの黄金の瞳がきらりと光を放つ。

「それ気に入ったら、あんさんのええ人にでも買うてあげてな。いつでもいくつでも注文受けるよって」
「君が作っているのか?」
「せや、わしの本業は細工師やから。水晶と銀製品が得意やね」
「銀の細工師? それだったら、薬品とかも詳しいか?」
「使わんわけやないけど、なんなん?」
「金を溶かすものはあるか?」

 サレンスの唐突な問いに彼女は首をかしげた。