「俺は……」

 あきらかに仏頂面をしたアウルだが、サレンスの人目を奪うひときわ端麗な顔に眼をやったとたん口調が変わる。

「あんた、ほんと美人だな。なあ、お姉さんか妹かいないか?」
「アウル、失礼すぎ。何てこと聞いているのっ!」
「美人だって、言ってたのはお前だろう」

 サハナは無言で、アウルの鳩尾にきれいに肘鉄を入れる。

「いてぇな」

 腹を押さえて蹲るアウルを気の毒そうに見ながら、サレンスはサハナを取り成す。

「いいじゃないか、サハナ。彼も若い男だ。女の子のことは気になるだろう。私だって君のように可愛いお嬢さんを前にしたら冷静ではいられないよ?」
「サレンスさんは優しいんですね。でも庇って下さらなくてもいいんです」

 銀髪の端麗な容貌の青年の言葉にサハナはますます顔を赤くしながらも、いまだ痛みを堪えているアウルの背を無意識のうちにばしばしと容赦なく叩く。

「アウルってば、きれいなお姉さんだけを目当てで、ドラゴン討伐に加わったみたいなものだし」

 うっとりとサレンスを見上げながら語るサハナに、さすがの彼も苦笑する。

(サレンス様も同じ動機なんですけど……)

 とは、レジィの心のつぶやきである。