深想シンドローム



座り込んでいた体を起こし、西くんは汚れてしまった制服を叩き、続けた。


「正直、そんな自信があった訳じゃなかったんだ。だからミーコちゃんたちにも署名集めておいてって言ったの。」

「なるほどぉ!西くんやるーっ!」



大はしゃぎするヒナちゃんに

「まぁ、こんなに上手くいくとは思ってなかったけど。」

と西くんは照れ臭そうに笑う。


だけど問題はここからだ。



「さっ、これで許可は下りたし。主役のエースをお呼びしなきゃねー。」

「そっか、肝心なミチルくんが来てないもんね!」

「まだ寝てたりして~。」

「それありえるかも。」


そう、ミチルくん本人をここに連れて来なきゃいけない。

明日香ちゃんたちに囲まれながら、西くんはポケットから携帯を取り出す。



だけど―――。




「――ま、待って!」




やっと腰を上げたあたしは、電話を掛けようとする西くんの手を掴んだ。


「…ミーコちゃん?」


西くんが不思議そうにあたしへ首を傾げる。


「待って…。」


ダメなんだ。
ダメなんだよ。


電話じゃ―――。