深想シンドローム



すると、西くんは少し言いにくそうにポリポリと耳の後ろを掻いて

「ミーコちゃんには悪いけど…、」

と、話を切り出す。



「エースは、何を言っても出ないと思うよ。」

「…え?」

「体育祭。」


ザァ、とその日一番強い風が、あたしと西くんの間を通り過ぎてゆく。

そして西くんは今までに見たこともないくらい、小難しい顔をして呟いた。



「…と言うか、出れないって言った方がわかりやすいかな。」

「で、出れない…?」


それって…。
一体どうゆう、こと?


声には出さず、心の中で問い掛けると

彼にはその声が聞こえたように、優しく教えてくれた。



「俺から言ってもいいのか、わかんないけどさ。」

「…うん。」


ぎゅっとスカートを握り締める。

これから聞くであろうことに、そっと覚悟を決めて。


西くんにもあたしの覚悟が通じたのか、彼はふぅと息を吐き出す。


「ミーコちゃんは知ってる?」

エースが留年した理由、と訊かれ、あたしは上ずった声で答えた。



「…体育祭が、原因だっていう…噂は、聞いたけど…。」

「…そっかぁ。」

「本当に、そう…なの?」


西くんの視線が、ゆっくりとあたしに向けられる。



「…そうだよ。」