ゆっくりと振り返ったあたしに
ミチルくんは眉を下げて、優しい声で言った。
「…この前は掃除、ありがとな。」
「……、」
その顔に、胸が掻きむしられるように痛んで。
あたしは返事をすることもなく、校舎へと走り出した。
…わかってる。
あたしは確かにバカだけど、ちゃんとわかってる。
ミチルくんの心に。
触れてはいけないことに、触れてしまったんだって。
あたしが、ミチルくんにあんな顔をさせてしまったんだってことも。
だから、あたしが傷つくのは間違ってるってわかってるのに。
何で―――。
「うわっ!」
「…っ、」
「…って、あれ?ミーコちゃん?」
ちょうどよく階段を上がり切った時、勢いよくぶつかった肩がようやくあたしの足を止めた。
あたしは慌てて顔を背ける。
でも、ぶつかった相手が悪すぎた。
「どうしたの?何かあった?」
「…な、何でもない、」
「何でもなくないでしょ。泣いてんのに。」
まさか、西くんにこんな姿見られるなんて。

