深想シンドローム



あたしの問い掛けに、一瞬だけ…

本当に一瞬、ミチルくんの顔が曇った。


でもそれはすぐに消えて。


「あんな面倒な行事出ねーよ。」

と、いつもの気怠るそうな態度で、彼は芝生に寝っ転がった。


あたしは蛇口を捻り、ホースを置いてミチルくんへ近付く。

さらさらと風に揺れるメッシュの入った黒髪。

着崩した学ランも、今じゃ見慣れた。


あたしはそんな彼にすかさず訊ねる。


「何でですか?」

「…何でって、今言ったろ。面倒だから。」

「でも、あれは全校生徒強制ですよ?」


そう、あたしだって。

本当はすんごーくイヤだけど、出なきゃいけないんだもん。


出なくていいものなら、あたしも出たくない。



「とにかく、俺は出ねーよ。」

ゴロン、と背を向けミチルくんはキッパリ言い放つ。


あたしは負けじと
反対側に回り込んで言い返した。


「いいから出て下さい!」

「ああ?何でだよ。」

「何でもです!」

「ふざけんな、アホかお前。」

「バカですけど、アホじゃありません!」

「お前はアホだしバカだ。」



そして、この後だった。

ミチルくんがあたしに声を張り上げたのは。