深想シンドローム



でも、次の瞬間。

あんなに悔しい、と思ってた思いは一気に吹っ飛んでしまった。



「まぁ、ミーコらしいけどな。」



ミチルくんのその言葉と、笑顔に。

完全に不意を突かれたあたし。



ドキン、と高鳴る鼓動。

じわっと胸に広がる温もり。


まるで体中が心臓になったみたい。



“ミーコ”

そうミチルくんが呼ぶと、自分の名前が自分のモノじゃないみたいな感覚になって。


「…っ、い、今更そんなこと言っても遅いですっ!」

「んだよ、つれねーなぁ。」


何だか、真っ直ぐにミチルくんを見れなくなってしまう。



…これって、何なんだろ?




んんっ、と咳払いをし、あたしはその思いをかき消すように話題を変えた。



「と、ところで!ミチ…エースは、」

「理流でいい。エースっつーのは、仲間内だけで呼ばれてっから。」

「じゃ、じゃあ…ミ、ミチル、くん…。」

「おー。何?」


今まで散々心の中でそう呼んでたのに、いざ本人を前にすると何となく恥ずかしい。

だから、ついポロリと本音が漏れてしまった。



「体育祭は、参加…しないんですか?」