偶然とは本当に不思議だ。
これぞ、まさに“噂をすれば…”ってやつ?
「お前、それ毎日やってんの?」
花壇に水やりをしていたら、突然掛けられた声。
考えすぎて、ついに空耳まで聞こえちゃったのかと思いきや、それはまさしく本人で。
「ぎゃっ!」
驚いたけれど、今回はさすがに水を掛けたりしないで済んだ。
どうやらようやく免疫が出来たらしい。
目の前には噂の中心人物、ミチルくん。
「ぎゃ、とは失礼なヤツだな。」
「す、すみません…。」
「ぶっ、何も謝ることねーけど。」
はは、と口元を手のひらで覆い、ミチルくんは笑いを堪えてる。
何だか笑われてばっかりだなぁ、あたしって…。
そんなあたしにミチルくんはいつもの指定席…
植木の裏の芝生に座って言った。
「で?それはお前の係な訳?」
「え?」
「だから、水やり。」
くいっと顎で花壇を指し、ミチルくんはあぐらをかく。
更に頬杖をつかれて見つめられると、これまた画になるってなモンで。
「そ、そうゆう訳じゃ、な、ないです。」
しどろもどろになっちゃうのも、仕方ないと思う。

