深想シンドローム



そんなあたしに、背を向けたままの彼は言った。



「だから俺、夢なんだよ。」

「…夢?」

「なんつーか…、幸せな家庭っつーのが。」


ミチルくんの髪が、風に揺れる。

その風が、あたしの髪もはためかせて。



あたしの小さな上着を掛けた広い背中は、迷いのない声でこう口にした。


「だから、結婚する女は何があっても守ってみせるし、幸せにしてやる。」


――どんなに苦労しようとも、と。




…まるで時が止まる感覚。


風も、草木も、青空に浮かぶ雲も

あたしのココロも。



全てが、彼の言葉に動きを止めてしまったみたいだ。


そして、その瞬間あたしの胸に生まれた熱いモノ。

それは言葉じゃ到底説明が出来そうにないくらい、あたしのココロを支配していって。



「…まぁ、こんなんじゃ結婚なんて出来そうもねぇけど…、」

「――そんなことありませんっ!」



気が付けばあたしは

「そんなこと、絶対ありませんっ!!」

と、ミチルくんの前に立ちはだかり、彼に向かって叫んでいた。



「そう思ってもらえるなんて、女の子は絶対嬉しいはずです!だから、きっとミチルくんなら作れます!幸せな家庭を!」