高校初めての体育祭は、それはもうすごい盛り上がりようだった。
あたしたち一年生にとってはもちろん初めてだし
三年生はこれが最後だからか、とにかくお祭り騒ぎで。
みんなの笑顔が、グラウンドに溢れ返っていた。
…なのに。
「ミチルくん、随分遅くなーい?」
日焼けを気にしてか、上下ジャージをしっかり着たヒナちゃんが眉を寄せて言う。
その横に座る明日香ちゃんは、タオルで風を起こしながら辺りを見渡した。
「本当だよね。」
「もうお昼かぁ…。」
ちづちゃんが腕時計に視線を落とし、ちらっとあたしに目配せをする。
「………。」
そんなみんなに、あたしは何も言えなかった。
あれから1時間程過ぎ
体育祭はお昼休みを迎えて。
だけど、ミチルくんは一向に姿を見せない。
ミチルくんと一緒に居るはずの西くんも、だ。
「…もしかして帰っちゃった…、」
「ヒナ!」
何気なくこぼれたヒナちゃんの言葉に、すかさず明日香ちゃんの喝が飛ぶ。
ちづちゃんまでもが、しーっと人差し指を立てヒナちゃんを諭していた。
けど、ここに居る誰もがおそらく同じ考えに違いない。
あたしは俯いたまま、静かに唇を噛み締めた。

