深想シンドローム



遠ざかってゆく背中を、未だ信じられずに呆然と目で追い掛ける。


来て欲しい、と願ってた。

一緒に体育祭を楽しみたいって。


でも、本当に来てくれるなんて―――。




「ミ、ミチルくんっ!」


思わず呼び止めてしまったけれど、ミチルくんは階段を下りる足を止めて振り返った。

その瞳に
この前のような冷たさは微塵も感じられない。


たったそれだけのことで、何故だか胸がいっぱいになった。




「ありがとう…っ!」


ありがとう、ミチルくん。


みんなの思いを、みんなの努力を。


受け止めてくれたんだ、って

そう、思ってもいいんだよね?




唇を噛み締め
涙を堪えるあたしにミチルくんはふっと口元を緩め

「よくわかんねーけど、とりあえず付き合ってやるよ。」

と再び階段を下り始める。


西くんは口パクで“よかったね”と笑ってくれた。


あたしもそれに笑顔で応え、西くんと二人でミチルくんを追い掛ける。



背中しか見えないけれど、何となく

ミチルくんは笑ってくれてるような気がした。