深想シンドローム



ガチャン、と背後に響く音。

あたしと西くんの足が、ほぼ同時に止まる。



弾かれるように振り返ったあたしの視界に映ったのは。


「お前ら、人のこと呼び出しといて帰る気かよ。」


気怠るそうに扉を開く

制服姿のミチルくん、だった。




「…エース、」

西くんも驚いてるのか、立ち尽くしたまま唖然としてる。

もちろん、あたしも同じだ。


…これは、夢?

あたしは幻でも見てるの?



そんなあたしたちを気にする様子もなく

「本当お前ら突然すぎんだって。」

と、ミチルくんは呆れたように扉を閉めた。



そして振り返った彼は、瞬きすら忘れてしまったあたしを見下ろす。


「おい、何ボケっとしてんだ。」

「…え、あ、」

「んとにお前って変なヤツ。」


ポケットに手を入れたまま、ミチルくんは笑ってあたしの前に立った。


そして―――。





「行くんだろ?学校。」



そう言って、階段を下り始めたのだ。