「行ってらっしゃい」 ひらひらと手を振りながら俺を見送る要をちらりと見、俺は事務所をあとにした。 再び車を走らせ、会社……桑田コーポレーションへと向かう。 家、会社、というのはトップシークレットを知っている人間が使う、ちょっとした暗号だ。 家、はもちろん桑田さんの自宅を指しているわけではなく、桑田組の事務所を指し、会社、というのは桑田コーポレーションを指す。 誰かに電話の内容を聞かれたとしても、当り障りのないように。