野良ライオンと文系女の猛獣使い

「つーかさ。気付いてねーみたいだから言っとくわ。周り、見てみ」

「……っ」


周り。──つまりは、騒々しい駅のホームのことで。
さっきから、チラチラこちらを伺ってる野次馬たちのことでもある。


「しゅうじーんかんしゅってヤツ? ガキンチョ敵だらけ〜」


愉快に歌うように口に出したのは、クソガキが気付いてなかったこと。

ていうか『衆人環視』ね。
なんだ、しゅうじーんかんしゅって。


「見てる人もいっぱいいるし、ここで手を出しちゃったりしたらどっちが悪者か丸分かりじゃ〜ん?」


そう、それだ。
見てみぬフリ、たって、見てはいるんだから、後々の証人には出来る。
先に手を出した方が悪者に写るだろう。

だからか、金髪は自分からは手を出そうとしてない。


「く、そ」

「クソはテメエですよ? この状況でまだやるってんなら、原型留めない程ボコにしてやるから、かかってきな」


言って金髪はクソガキの手を解放した。

クソガキは動けない。
多分、どうしたらいいか整理出来てないんだ。

そんなクソガキに、金髪が追い撃ちをかけるように一言、


「それが嫌ならさぁ……、とっとと失せろ。クソガキ」