「あ、そんでよ。二人にはワリィんだけど、ちょっとシンさんトコ行ってくるわ」

「何かあったの?急用?」

「ま、急用っちゃ急用だな」


言いながら、金髪は自分の荷物──と言ってもタバコとケータイくらいだけど──をポケットに押し込んで立ち上がる。


「ベース。良さそうなの見つかったらしいんだ。でもほら、俺の意見も聞きたいらしいから来てほしいんだと」

「え、見つかったんだ!?」

「へぇ、良かったじゃない」


加奈子と続けて言ってやると、金髪はニカッと笑って見せた。


「おう!まだ本決まりじゃないんだけどな。つー訳でワリィな二人とも、この埋め合わせは今度するからよ!」


パシンッ、と自身の顔の前で両手を合わせる。まるで拝んでいるみたいだ──、って実際私らのこと拝んでるのか。


「気にしなくていいよっ!」

「それより、せっかくメンバー増えるかもしれないんだから、さっさと行ってあげたら?」


私達の言葉に一つ頷きを返して、この店の伝票持って歩き出す。


「じゃあまた今度な!カナちゃん、あざ!!」


言って慌ただしく去っていく金髪に、私は声をかけそびれた。


「支払い。別に割り勘で良かったのにね」

「ん、そうね」


適当に相槌を打つ。
変な所で律儀なんだ、アイツ。

っていうか、そんなことより何より気になることが今できたんだけど。


「……『あざ』って何なのさ」


加奈子には聴こえないように呟く。

微妙に変化した私の呼び名と、金髪の表情に感じた違和感を抱えたまま、金髪との二度目の食事は終了した。