「良かったよねえ!」


だから、口を開いたのは加奈子だ。
金髪の表情に、微妙に硬直してしまった私と違って、普通に会話を展開いていく。


「ん?カナちゃんその場にいたっけ?」

「その時にはいないよぅ!でもさ、チャンプの音楽ってカッコいいよね!」

「……だよなぁ!だからそん時に、こんな風に音楽やれたらって思ってよ、シンさんに声かけたんよ!」


そうやって話す金髪は笑顔で──って、あれ?


「でも、シンさんも良くオッケーだしたねぇ。解散直後だったのに」

「そこは必死になー。シンも、まだくすぶってたみてえだしよ」


加奈子と話続ける金髪は、相変わらずの笑顔だ。

でも、なんだろう?何か妙な感じがして、眼を逸らせない。


「あざとちゃん?ボーッとしてるけど、どうかした?」

「え?いや、別に──」


何でもない、と加奈子に答える前に、私の声を遮ってケータイが鳴った。

聞き覚えのない着信音は、それが私のでも、加奈子のものでもないことを示していて、案の定ケータイを取りだして確認したのは、笑顔で話続けていた金髪だった。

彼はディスプレイを確認すると、一度こちらに目配せしてから通話ボタンを押し込んだ。


「あ、もしもしぃ!レオ様デスケド、何用でしょうかー!」


ケータイに向けてまで無駄にテンションが高いこの男は、通話先の人間が、その音量を聞いたら迷惑だって考えてないのか。


「ん、んー。いや今ちょっと友達と遊んでんだけども、今すぐのがいいんか?……オッケ、わかった。……ん、いやシンさんが謝らんでも。そんじゃ、後でな」


ピッ、と電子音とともに通話が終了する。
意外にも、会話している時間は短かった。大した内容じゃなかったのだろうか?


「シンさんからだったの?」

「おう。噂をすればなんとやら、ってやつだにゃ」


うひゃひゃひゃ、と金髪はまた笑って──あれ?
なんだろう、また妙な感じがしたけど。

それが形になる前に、金髪が話始める。