私がボソリと呟いた言葉に、金髪の笑いが止まる。
加奈子も「そう言えば」みたいな顔を金髪に向けた。

だってそうでしょ?
勧誘なんてのは、ある程度実力がわかってることが最低条件だと思うし。
聞いたこともないバンドのドラマーなんて勧誘しないでしょ。


「……シンと知り合ったのは、シンのバンドが解散する直前でさぁ。ちょっとシンの所に行く用事があったんだわ」


急に、金髪の口調が変わる。まるで昔を懐かしむようなそれは、なんだかこいつに似合わない。


「そん時丁度、解散前に最後の演奏すっか、みたいな話してたみたいでさ。ボーカルはいなかったんだけど、シン達の最後の演奏、聴いたんよ」


そこまでで一度区切ると、ゆっくりと、でも確かに表情を変えて、口を開いた。


「そん時の演奏がスッゲェ良かった!何が良かったか何てうまく言えねえけどさ、良かったんだよ!!」


あまりにも抽象的過ぎる。
仮にもアーティストなんだからもっと良い表現出来ないのか。

そう思った。
けど、口には出せなかった。


子供みたいな感想を叫んだ金髪の、その表情が、ホントに『良かったんだ』と思わせるに充分だったから。